• 四十代夫婦が綴る書評と雑記

新着情報

書評「人間みたいに生きている」 フェアであることに自覚的な小説。

人間みたいに生きている 佐原ひかりの三作目。 全三冊、読んでの感想として、この作家の小説はフェアだなと思いました。 小説というものは大抵、語り手か視点人物に寄り添って書かれているものが多いと思います。 一人称であれば語る …

2023年7月17日 /
書評
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書評「シンジケート 新装版」 手に取りたくなる佇まい。

シンジケート[新装版] 1990年に出版された穂村弘の第一歌集が2021年に新装版となって再出版。 この新装版は表紙の絵がヒグチユウコ、装丁は名久井直子、解説は高橋源一郎、といった超豪華メンバー。 私が初めて穂村弘という …

2023年7月15日 /
書評
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書評「奇跡のバックホーム」 背番号「24」に値する選手の闘いの記憶。

奇跡のバックホーム 阪神タイガースを背負って立つ選手になるはずとファンから将来を嘱望されながら、 脳腫瘍との闘いにより、プロ野球選手としてのキャリアを6年で終えることとなった横田慎太郎の本。 素直な想いと言葉で綴られる闘 …

2023年7月12日 /
書評
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書評「こんとん」 中国神話をもとにした、もの悲しく柔らかな絵本。

こんとん 中国神話に登場する「渾沌」の伝説をもとにして、 文を夢枕獏、絵を松本大洋が手がけた絵本。 40代の私にとって、松本大洋は学生時代からのヒーローです。 大学に入り、地元では知らなかった価値観や嗜好に触れて、大きく …

2023年7月10日 /
書評
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書評「武道館」  アイドルを扱った職業小説。

武道館 (文春文庫) 直木賞作家である朝井リョウが、武道館ライブを目標に活動するアイドルグループを描いた作品。 アイドルに興味が無い人でもよく知る出来事もモチーフに加えられているため、 ストーリーに入り込みやすいと思いま …

2023年7月6日 /
書評
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「ピーター・シスの闇と夢」鑑賞してきました。

八王子市夢美術館で開催されている「ピーター・シスの闇と夢」に行ってきました。 ピーター・シスは、チェコスロヴァキア生まれで、現代アメリカを代表する絵本作家です。 日本だと、このチェコに生まれたという意味合いが伝わりづらい …

2023年7月4日 /
おでかけ, 美術館
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書評「ペーパー・リリイ」 強かで爽やかなロードムービー

ペーパー・リリイ 結婚詐欺師の姪と、その詐欺師に騙された女、二人の旅路。 妙な関係性の二人は、性格もまるで違うし、女子高生と三十代で世代も違います。 この二人、ちょっと誤解を生みそうな言い方になってしまいそうですが、 私 …

2023年6月29日 /
書評
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書評「私の文学史 なぜ私はこんな人間になったのか?」 偏屈な在り方を率直に語る。

私の文学史: なぜ俺はこんな人間になったのか? (NHK出版新書 681) NHK文化センター青山教室での講義をもとにした本。 町田康の文学における原点や思考、幼い頃の記憶等を、かなり率直に語った内容でした。 しかし、そ …

2023年6月22日 /
書評
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書評「きみに贈る本」 出会い、向き合う書評集。

きみに贈る本 中日新聞・東京新聞での連載を書籍化した書評集。 中村文則・佐川光晴・山崎ナオコーラ・窪美澄・朝井リョウ・円城塔、6人の作家が、 9冊から10冊(うち1冊は自著)紹介しているのですが、 1冊あたり2ページ半ほ …

2023年6月19日 /
書評
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書評「完全犯罪の恋」 かつて文学青年だった方におすすめしたい小説。

完全犯罪の恋 ソール・ライターの写真を用いた表紙に惹かれ、手に取りつつも、 何だか田中慎弥らしくないタイトルだな、と思いました。 その印象は、序盤を過ぎた頃、いつの間にか消えていました。 芥川賞作家の著者本人を思わせる四 …

2023年6月14日 /
書評
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書評「クララとお日さま」 温かく冷たい、人間と心を書いた小説

クララとお日さま カズオ・イシグロのノーベル文学賞受賞後、第一作。 AFと呼ばれるAI人口知能を有したロボット・クララと、 彼女と共に暮らすことになった少女ジョジーの交流、二人を取り巻く人々との暮らしが描かれています。 …

2023年6月7日 /
書評
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書評「畏れ入谷の彼女の柘榴」 現代性と民俗性が見事に溶け合う。

畏れ入谷の彼女の柘榴 私が学生の頃、後輩が舞城王太郎さんのファンでよく薦められました。もう二十年も前のことです。 当時は近代文学のゼミとサークル活動に忙しく、なかなか手に取ることが出来ませんでした。 それから随分と時は経 …

2023年5月30日 /
書評
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