池澤夏樹による二部構成の詩集。
第一部にあたるのが「メランコリア」。
1998年にイラストレーター阿部真理子との共著で出版した同名作品の詩部分のみを再掲した形。
去った女を追う男の道程を詩にしているのですが、恨みのような暗い感情は薄く、
むしろ追うことを旅程のように楽しむような清々しさすら感じる不思議な詩でした。
いつか共著の方も手に入れたいと思います。
第二部は、2歳の時から最近までの詩。
この2歳の作品が残っているというのは、やはり父が福永武彦だという点が大きいですよね。
子どもの工作やいたずら書きをずっと残しておくという親はいると思いますが、
2歳の子の言葉が書き残されているというのはあまり聞きません。
また、その言葉が他愛のないものというのではなく、不思議なリズムがあって魅力的。
だからこそ残されたのかもしれません。
全体を通すと、ミュージシャンにおけるレアトラックスみたいな印象もあります。
作者の言葉の魅力もあり、それでいてその人自身にわずかだが触れられたような、
そんな愛読者を喜ばせるような作品集に感じました。
ちなみに、著者と私は出身地がかなり近く、漠然とした親しみをずっと感じています。
愛読者でもあり、また同郷の親近感を勝手に感じてもいるのです。
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