往復書簡ではあるものの、二人の手紙はあまりトピックを強くは共有しない。
ブレイディみかこからのトピックに対し、谷川俊太郎が乗っからない感覚があります。
すれ違っていたり、ずれているのとは違います。
もちろん反目したり、スカしているのでもありません。
例えば同じライブハウスのステージに立ってセッションしているのに、
一緒に奏でるのではなく、ギターソロを交代しながら奏でているみたい。
この二人、そもそものスタンスに明確に違いがありますよね。
強く政治や世情に関心を持ち外部との関わりが作品の根幹に関わる作家。
読者を意識した詩を書くものの、その源泉はきっと自分の心に向き合い続ける営みにある作家。
小説やルポと、詩や絵本という作品形態の違いのみならず、向き合ってきたものが違う印象です。
優劣の話では無論ありません。魅力あるものを紡ぎ出す方法が一種類なわけがありませんものね。
そういうわけで、この往復書簡は独特の二種類の手触りを持ちます。
多分、多くの人が往復という意味合いから期待するそれとは違いますが、
二人の人物の在り方を改めて感じる一冊でした。
差し挟まれた奥村門土の絵は印象的、特にやっぱり表紙の絵が見事。
二人の作家の立つ、それぞれの岸にかかる橋のような、大きな役割を果たす絵だと感じました。