最近「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」で話題の三宅香帆さんのエッセイ。
大きく「地元」「京都」「読書」の三項目で構成されているのですが、
本が好きな人であればあるほど同志のような心持ちで読めるエッセイが多く収められています。
自分の心情を言語化する上手さもありながら、言語に固執することの恐さを考えさせられるエッセイも
あって、気楽さや心地良さだけに留まらない、読むことの面白さを感じられる一冊でした。
特に強い印象を受けたのは「地元」の項目。
三宅さんは高知で育ちましたが、私は北海道のある街で育ちました。
読んでいると、自転車で行ける範囲にある街並み、チェーン店に対する感覚など、
共感できる部分が多々ありました。
北と南、東と西、かなり離れた土地でも、
もしかしたら同じような景色を眺めて育ったのかもしれません。
世間では時折揶揄されがちなイオンモールやブックオフに対する愛着のようなものは、
私にも学生時代から育まれているもので、
それを言葉にして誰かに話すという機会はあまり無いまま生きてきましたが、
何だかようやくそのことについて著者と共有できたような感覚で嬉しかったです。
「そういう感覚ありますよね!」と思わずやや大きな同意の声をあげてしまいそうな……。
表紙のデザイン、かわいらしいイラストに惹かれて読んでも期待にぴったり合うでしょう。
また、パラパラと捲って、数行読んでシンパシーを感じたなら
通読するときっと居心地の良さとハッとする思いをもたらしてくれると思います。