随分コロナ禍を直接的にモチーフに使うんだなぁと読み進めて、
ふと奥付を見ると、2019年7月5日が初版。
コロナで世界が騒然とし始めるよりずっと先にこの小説を書いていたのかと思うと、
感服すると同時に恐ろしくもなりました。
それくらいにこの小説内で起きたことは、現実に巻き起こったこととリンクしているのです。
伊坂幸太郎らしい、不穏な気配が満ちた先に、読者が希望を持って読んでいけるような内容。
新たな試みとして、ところどころに数ページずつコミックのようなものが挿まれています。
これが小説内のアクションや構図を理解しやすくしているんですよね。
もちろん伊坂幸太郎の文章をもってすればそれらは十全に伝わるんですが、
この小説特有の「夢」の中の場面では、この絵がとても効果的でした。
小説内での、いわゆる現実的な世界と、夢の中とされる中世RPG的世界がリンクする構造は、
村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読んだ時のような好奇心も湧き、
また少年漫画を読むような素直なワクワクも感じます。
多くの人々の生活を左右するような事態に、有名人も無名の一般人も、
使命を帯びている人たちが、協力し合って、戦う様は胸が温かくなります。
ただ、その騒動や混乱の一因になるのは、
人々の邪悪とは言えないまでも卑しい心であったりもして、
ここ数年の出来事、コロナ禍に限らず、
有名人のごくプライベートな事柄まで執拗に攻撃する風潮を思って、
考え込んだりもしました。
この小説、面白いので、おすすめです。
お読みになる際は2019年に出た本だということを意識してみてください。
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