緩やかながら力強い再起や再生を描いた作品だと感じました。
大きく損なわれているように見えなくても、とっくに立ち直っているように見えても、
決定的に弱っているということは世の中にはあるはず。
それが傍目からは感じとれないだけ。本人たちにしかわからない。
よしもとばななは、こういう弱り方を書くことに優れた作家なのだと思います。
思えば大学の頃にゼミの関係で読んだ「キッチン」もそういった面がありました。
そういえば「キッチン」も食べ物が重要な役割を果たしますね!
登場人物たちには感情移入し難い部分はありました。
寛容さや柔軟性に、自分とは相容れないものを感じ、居心地の悪い感覚があったのです。
とはいえ、彼女たちの言いたいこと願うことがわからないわけではありません。
気が合わなくたって、理解は出来るものですよね。
情景が思い浮かぶような街に、自分とは心の枠が異なりそうな人たちが暮らす。
そのことに戸惑いながら読み進めれば、
淡々として見える日々の中でも確実に動いている感情に、
こちらもいつしか想いを寄せている。
ある種の閉塞感は意図的に書かれているものかもしれませんが、
それが開けたような終盤は清々しいです。
そして日々はまた閉塞していくのかもしれません。
それが寂しいような悲しいような気はするのですけれども、
解放する手段を得た上での閉塞は、それまでのものとはきっと意味合いが変わるはずです。
文庫版の後書きが興味深いので、手に取られる方は是非そちらも読んでみてください。