• 四十代夫婦が綴る書評と雑記
トビウオが飛ぶとき 「舞いあがれ!」アンソロジー [ 桑原 亮子 ]

NHKの朝ドラ「虎に翼」が話題ですよね。

私の周囲でもけっこう話題に上ることが多く、

個人的にはもしかしたら「あまちゃん」以来の話題性かも。

ただ、実は私は観ていません。どうも連ドラの視聴習慣をつけるのが苦手でして……。

約三か月間の連ドラですら毎週観ると思うと何だか気が重くなるくらいなので、

一話が短いとはいえ平日毎日の朝ドラはなかなか観る気力が湧かないのです。

そんな私ですが「舞い上がれ!」はしっかり観ておりました。

連ドラが苦手な私が見続けられたのは、多分、大きく分けて理由は二つ。

一つは、主人公の父親役の高橋克典さんの演技がすごく自分の心にしっくりくるものだったから。

そしてもう一つが短歌が重要なエッセンスになっていたから、です。

このアンソロジー本は、そんな「舞い上がれ!」に登場した歌人たちの作品を収めたもの。

メインとなるのは主人公の相手役、 赤楚衛二さんが演じた貴司君の作品ですが、

私が最も心を動かされたのは秋月史子の歌でした。

八木莉可子さんが演じた、作中では少し嫌われ役というんですかね……主人公に反発する役柄でした。

しかし、この本に収録された秋月によるものとされる歌は彼女の外面と内面を併せて表現した、

しんみりと切なくなるような魅力があるんです。

歌に触れることで、改めてその人物像に親しむ感覚がすごく面白い。

このアンソロジー、実のところ、脚本を手掛けた桑原亮子さんがお一人で

登場人物ごとに作風を変えて歌を詠まれているというのが凄まじい。

人物の内面に対する解像度が高いので、それぞれのキャラクターが実際に詠んだものとして

とてもしっくりくる内容でした。

私のようにドラマを観てから読むともちろん面白いですが、

ドラマを観ないで読んでも魅力的な歌がたくさん収められています。

これは短歌を好きな方には是非手に取ってみて欲しい一冊です。


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