ダガー賞受賞で話題になった王谷晶による小説。
次々と繰り出される暴力描写は、
スピード感があって、
だからこそ所々にある日常的な部分が
心地良いテンポを生みます。
ただし、当然その日常も
暴力性の中にあるものなのだと
知らしめるような展開が面白い。
小説のページ数でいえば八割くらいまでは問答無用で面白いんです。

ただ、終盤の二割くらいが何だかスッと入ってこないんですよね……。
最高の球速とノビのストレートを何球も見せつけられて高揚した後に、変化球が続いて終わった感じ。
もっと屈服させるような豪球で試合を締めてほしかったなぁと思いました。
投じられた変化球が悪い球ではないので、これはこれで良いんだけどね、とモヤモヤ。
表紙の寺田克也の絵、流石ですね、バキバキにカッコいい!
暴力描写はかなり過激なので、そういった漫画や映画に拒絶反応がある人には向かないと思います。
映像や絵ではなく文字ではあっても、その描写が見事で、明確にビジュアルが想起されるはずだから。
個人的には終盤は少し好みから外れましたが、そこに至るまではめちゃくちゃ面白かったです。

