本書前半の、町田康が担当した新聞紙上での人生相談部分は面白いんです。
どの相談にも正面から受けながら、飄々と流すような素振りでと思いきや、
しっかりと結論を言う。
町田康の人生相談と聞いて思い浮かべるものよりも、より真摯、より正面、そんな印象。
ただ、本書後半、町田康といしいしんじによる散歩しながらの談義めいた内容、
これが好きではありませんでした。
町田康のファンだし、いしいしんじの作品も幾つか読んで楽しんできました。
しかし、この談義が何かを無理くり類型化し見抜こうとする感じがあり、正直なところ腹立たしい……。
市井の人たちには各人なりの想いがあり、
二人が一括りにしている会社勤めの存在たちにも括りようのない現況があると思うんです。
自分の経験のみを頼りに看破したようなことを論じるのは、思慮の無い学者みたいで、
町田康的に言えば「わざわざ本にするもんちゃうやろ、腹立つのぉ」ってな感覚でした。
この本が世に出たのは2001年。
そりゃ今読めば二人の言うことに違和感があるのは当然かもしれませんが、
それにしても随分と懸命に生きる人々を軽く見ちゃいないかな、と
腹立たしい気持ちで読み終えました。
空虚な目で道を歩いていても、
誰かに自分が暮らす時間を虚ろなもののように本に書かれるのはなかなか胸糞悪いものでしょう。
ましてや、それが好きな作家なら、落胆も混ざります。
旅先の葉山にある三角屋根という素敵なカフェで読んだのですが、
レモンケーキもコーヒーも美味しかったです。
それ故に、もっと気分の良くなる本にすれば良かったですね……。
前半の人生相談部分だけならば面白いんです。
なんというのかな、普段はそれぞれ面白い友人たちなのに、
二人揃って話し始めた途端、急にちょっと嫌な話を始めちゃったなぁって感覚でした。