私は飛行機の機内誌に載っているエッセイを読むのが好きです。
最近だと浅田次郎さんや吉田修一さん等が書かれていますよね。
この本は、東京メトロの機関誌に載っていたわけではありませんが、
機内誌のエッセイに雰囲気が似ています。
2014年に亡くなったイラストレーター安西水丸さんの晩年、
2013年の月刊「なごみ」での1年間の連載をまとめた本。
出版されたのは2023年なので、執筆からかなり経っての書籍化となります。
地下鉄に乗って、東京の街に出かけ、さりげなく街の成り立ちに触れ、
思い出話を軽く語っての、俳句とイラスト。
なんとも粋であり、安西水丸だからこその連載だったのだろうと感じました。
微妙に歪んだ線と少しだけはみ出す塗りはやっぱり魅力的。
素人が軽く気負わぬその雰囲気を侮って、迂闊に真似しようとすれば、
ふにゃふにゃと不安定な線と手を抜いた塗りの、下手くそな絵が仕上がるでしょうね。
そんな水丸さんの散歩先でのイラストがたくさん掲載されています。
1年で12ヶ所の散歩、これについては迂闊に真似してみても、きっと楽しいはず。
何処から何を見たか、視点と視線が意識された文章はイラストレーターならではだと感じました。
ちなみにこの本での神無月の行先は神田神保町。
やっぱり秋は読書へと誘われる季節ですね。