近年珍しいくらいの爆売れ小説ですよね。
収められている短編はどれも読みやすく、面白く、気分が良くなります。
読んでみると「そりゃ売れるわ」とも思うし「これが売れる世の中で良かった」とも思います。
何だろう、ちょっと偉そうな発言に思われてしまいそうですが、
一人の読書好き、一人の本好きとして、この作品のヒットが嬉しかったんです。
関係者でもなんでもないのに、ただ書店や図書館によく行くだけの人間なのに、
それでも妙に嬉しかったんです。
中学生から高校生の戸惑いや嫉妬、きらめき等々、感情が瑞々しく表現されています。
そして、たぶんそんな感情とは遠い場所にいそうな孤高の存在である成瀬は、
まるで少年マンガの主人公のように頼もしく、清々しく、カッコ良い。
しかし、超人めいた成瀬もまた相応に悩み、悔やみ、青春を楽しみます。
悟空やルフィのような軽やかで爽やかで長所の多い存在でありながら、
サイヤ人でも悪魔の実の能力者でもない普通の10代でもある。
この少年マンガ的爽快感と、日本文学的繊細さが組み合わさり、
レンジの広い面白さに繋がっていると感じました。
成瀬を中心としたエピソード以外も単体で面白い上に、
エピソード同士の関わりが見事で、一冊の本として魅力的。
多忙でまとまった読書時間が取れない方、読書習慣が無い若い方に、是非勧めたい本です。