灰谷健次郎による柔らかく率直な言葉で綴られる4つの短編は、
体感したもの、心に生じたものを飾り立てることなく示していました。
人の生活に残酷なまでに自然と根づいてしまう差別や区分けといったものを書きながら、
それらを大きな規模で不明瞭にするのではなく、
個人的な人間同士の関わりの中に描き出しています。
どうしてもそういった根深さのある物事って、大きく広く書かれがちな気がして、
でも、それによって輪郭がぼやけてしまっていることがあると思うんですよね……。
この短編集はそうした不明瞭さがありません。
生まれた国、貧富の差、発達の遅れ……
目を逸らしたり、気にしていないふりをしていやしないか、
この本を読んでいる間、度々自分を省みました。
平易な言葉で、多くの人の中に生じてしまっているものを表した、
読みやすく奥行きと温度のある短編集でした。