• 四十代夫婦が綴る書評と雑記
星に帰れよ

当時16歳にして文藝賞優秀作を受賞した新胡桃さんの作品。

描かれる学校生活は、普遍的な要素もありつつ、現代的。鋭敏な視点がリアリティを生んでいます。

肥大して凝り固まった自意識を抱え、その大きさも固さも自覚している故の苦悩は、

思春期らしい瑞々しさに危なっかしい深みも加え、

星の浮かぶ夜闇へと読者を引き込んでいくようです。

多感な十代を扱った作品ね、という安易な先入観で手に取ると、

他者のみならず自己にも向けられる鋭い視線にたじろぎます。

印象的だったのは、登場人物がクラスメイトを心の中で「ガム」と呼んでいる描写。

親近感のふりをした、人を見下す傲慢さが表れたネーミング、見事な一節でした。

いわゆる陽キャのジメジメとした心理、陰キャの妙に爽やかな在り様、

面白キャラが抑え込んでいる本心。

ただ二面性を極端に描くのではなく、そこには自然で当たり前の混濁みたいなものがあります。

類型化されることで苦しんだり、違和感に悩まされる様子が比較的短い小説の中に、

しっかりと書き綴られていました。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です