スタイリッシュで美しいイラストはもちろん魅力的。
漫画は原稿に近いようなベタの濃淡まで伝わる形で収められており、
じっとその技術とセンスに見入ってしまいます。
タイトル通り、この本では過去に時代性も含めて見事に描かれた東京の街並みも楽しめます。
私は上條淳士さんの作品はほとんど読んでいて、
中でも「赤✖️黒」のスタイリッシュなバトル描写が印象に残っています。
また「8-エイト-」は全巻所有しているからこそ、
あの続きをいつか読めるのではないかと期待してもいます。
実は吉祥寺での個展には頻繁に足を運んでおり、
上條さんからサインをいただいたことも何度かあります。
キレのある漫画の印象とは少し異なり、佇む姿から才気はもちろん感じる方なのですが
訪れた読者にとても優しくて、丁寧で親切。
漫画の中で激しさや冷たさと共にある穏やかさ、柔らかさ、温かさといった奥行きや重なりは、
こうした魅力的な人柄から紡がれている部分もあるんだろうなと感じた記憶があります。
この本でも、終盤に掲載されているインタビューからそうした魅力的な人柄や視点が伝わりますね。
キャラクターにもストーリーにも、そして読者にも気持ちを傾けているはず。
最近では、デヴィット・ボウイ、吉川晃司、THE NOVEMBERS等、
実在の人々を描いた作品をよく目にしますが、元々魅力的な人をソリッドに削りあげて、
魅力の一つを最大限に表現するようなイラストはとてもかっこいいですよね。
出来れば漫画、特に「8-エイト-」の続きを願わずにはいられないけれども、
それはまぁ……気長に待ちます。