もう一年以上前なのに未だにWBC優勝を思い出すと、胸が熱くなりますよね。
侍ジャパンを率いた栗山英樹監督はきっと途轍もない重圧を背負っていたことでしょう。
私のようなプロ野球ファンにとっては、
贔屓チームの選手が代表に選出されるのは誇らしい気持ちもある反面、
シーズンに支障が無いよう怪我をしないでチームに戻ってきてほしいという心配な気持ちもあります。
日本代表の監督はそういったファンや各球団関係者の思いも受け止める、
心身ともに負荷がかかる立場しょうね。
さて、本書はそんな栗山監督が日本ハムファイターズを率いていた2019年初めの出版です。
時期としては甲子園のスター・吉田輝星がドラフト1位入団、
他にもこれからの日ハム主軸候補である万波中正、野村佑希が入団したドラフトの後くらいですね。
日ハムファンにとっては大きなドラフトだったはずです。
私はパ・リーグは日ハムを応援していますので長く続いた栗山政権下のことはよく覚えています。
優勝も最下位もあってチームの浮き沈みが激しい中、栗山監督は他チームに比べて、
チームの不調や敗戦の原因を自分自身だと発信することが多い方でした。
ファンとしてはそれが潔く見えることもあれば、
はぐらかされている気持ちになることもあったように思います。
この本には、何故、責任や原因を自分自身だと考えるのか、についても記されています。
また栗山政権にて不動の四番を背負った中田翔選手についてもかなり分量を割いて語られています。
読んでいて感じるのは、栗山英樹という人物の言語化能力です。
優れた判断力や鋭い嗅覚の持ち主、稀有なモチベーター等、
野球監督には様々なタイプがいると思いますが、私が栗山英樹という方に最も感じる能力は
この言語化の力ですね。
著書を読むと、この方が読書から幅広い情報を仕入れて、
それをしっかり自分の言葉で知識や監督業の糧にしているのがよく分かります。
タイトル「稚心を去る」というのは幕末の志士・橋本左内の言葉からです。
歴史好きには知られた人物ですが、ご存知ない方も多いかもしれません。
大河ドラマ「青天を衝け」で小池徹平が演じていた人物と言えば少しイメージが湧く方もいるかも。
この言葉の意味はざっくりと言えば、世に出て立派になるためには子供っぽい心を捨てよ、
ということです。
栗山監督がプロ野球選手として人間性のようなものを重視するところとイメージが重なる言葉ですね。
大谷翔平をメジャーに送り出した後、そしてまだ日本代表を率いる前の、
名将というよりは一人のプロ野球に携わる人間としての考えや思いが綴られた一冊です。
野球に興味がある方はもちろん、日頃から読書家と話すのが好きな方にもおすすめです。
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