• 四十代夫婦が綴る書評と雑記
黄金列車 (角川文庫) [ 佐藤 亜紀 ]

戦争という大きなもので見えなくなりがちだけど、

その内側や裏側では個々の意地や諦念、虚無感に使命感、執着、

挙げ切れないほどの感情が当然あります。

軍人も文官も市井の人々も。

せめてましな道を、ましな未来を、ましな余生を、

そうやって宥めすかしたり、抗ったり、受け入れたり、あるいはそういうふりをしたり。

全体に重い時代の虚しい雰囲気が漂っているのに、ページは軽やかなまでにどんどん進みます。

佐藤亜紀さんの小説には、そういった重さや硬さといった質量を感じるのですが、

それらが敷居の高さではなく、世界観の堅牢さに繋がっていると思います。

入り込むと、その世界の中で夢中になって読み進められます。

個人的なこの小説の難点は、人名が覚えられないということなのですが、

それはカタカナに弱い自分の責任ですね……。

未だに戦火の絶えないこんな時代だからこそ、より強く訴えかけてくるものがありました。


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