優しく穏やかな男が、運にも身内にも恵まれず、辛い一生を送る。
その一生の終盤を見守る男たちの在り様は適温で柔らかでした。
とはいえ、人生が好転するには失われたものは大き過ぎるし、
手に入れられなかったものは他で埋められません。
もう15年以上前に読んだ漫画を読み返しましたが、
あの頃に感じた寂しさや悔しさを混ぜた感情は再読しても湧いてきます。
それでも、若い頃に感じた誰かの辛さにわざわざ想いを寄せたいという感覚は今はもう乏しいです。
その変化が良いことかわかりませんが、
月日を重ねた今では辛い漫画を敢えて手に取るのが難しくなったように感じます。
若い頃に読むのが適している漫画、
心身ともに余裕がある頃の方が受け入れやすい漫画というのはあるのだと思うのです。
この漫画は自分にとってはそういう作品。
一冊の漫画として、一つの物語として、一人の生涯として、悲しく整った作品です。
だからこそ、しっかりと読むには心身の体力とバランスが必要だと思います。
若い頃にはオノ・ナツメさんの作品をたくさん読みました。
読んでいた中ではこの作品が特に頭身が低く、
ポップな絵柄なのにズンと重い気持ちになるのが印象的でした。
15年経とうが心を動かした作品というのは忘れないものですね。