浅野いにお初の長編連載作品。掲載誌はクイックジャパン。
この本を買ったのはもう19年も前。
その頃にはこの作者の作品にすごくハマっていて、ほとんどの単行本を発売してすぐ買っていました。やがて、作風が露悪的になっていくように感じて心が離れ、随分経ちました。
久々に読み返すと、わざわざ人の醜さを集めて描く感じにしんどくなります。
ただ不思議なもので、それでも読み進めたくなるんですよね……。
絵柄の魅力、ストーリーの引き、多くの登場人物を一つの漫画で描き切る才能、
様々なものが組み合わさり、魔術的に惹き込まれます。
とはいえ、若い頃のように手放しに愛せないのは、
醜さを見せつけるような漫画を求めるような生活を送っていられないからでしょうか。
こうしたものを好んで読むには、それなりに心身の体力と余裕が必要だと思います。
あの頃はこうしたものを選び取っていくだけの好奇心があり、
そして、それを味わうだけの心身の余裕があり、
ズーンと沈んでも盛り返すだけの楽しみが日々に溢れていたのでしょう。
一冊の本として手に取ると、美しくも恐ろしいこの装丁は、漫画の内容に絶妙に合っています。
この本が自分にとって必要だった頃、この黒が本棚のアクセントになっていたことを思い出しました。