ホームズがモリアーティ教授と友人同士で、
アイリーン・アドラーがライバル探偵で、住まいは寺町通221B?
こんな風にその関係性と舞台の違和感を存分に楽しむには、
やっぱりシャーロック・ホームズの基礎知識のようなものは必要かなとは思います。
シャーロッキアンほどの知識量は必要ないでしょうけれども。
とはいえ、そこは流石の森見登美彦。
登場人物たちをサンプリングしてリミックスして、キャラクターを際立たせて、
恐らくホームズとワトソンの名前しか知らない人でも迎え入れるに足るポップネスは担保しています。
読み進めると、どんどんこのメタフィクションに引き摺り込まれいきます。
幾人かの登場人物たちと共にメタに翻弄されるのが不思議な感覚で面白いんですよね。
この翻弄される面白味って、森見作品の醍醐味の一つだなと個人的には思います。
もしかしたら激怒しちゃうシャーロッキアンもいるかもしれませんが、そこは寛容に構えて、
こんなメタフィクションまで成立させ得るホームズ譚の魅力を今一度噛み締めたいところ。
かくいう私も少年時代、シャーロック・ホームズに夢中になり、読み耽ったものです。
この「シャーロック・ホームズの凱旋」はいわゆる推理小説や探偵小説といった類とは異なりますが、
寛容なホームズファンならきっと楽しく読めるのではないでしょうか。
あと、個人的には”森見登美彦の凱旋”といった印象もありました。