中国の故事や物語に対し、現代の作家がスピンオフを書いたのが本書です。
翻案や現代語訳ではなく、スピンオフというところがポイント。
元となった作品は、日本人にとっては
細部まで知っているものでもないでしょうが、
沙悟浄や趙雲、虞美人に項羽、李斯、司馬遷は
なんとなくイメージがある人も多いはず。
でも、そんなイメージが中国でのものと一致しているかというと、
かなり驚くかもしれません。
日本人にとっては沙悟浄って河童のイメージだと思うんですが、
中国ではまったくそんなことないんですよね。
恥ずかしながら、私はこの本を読んで知りました。

最近でいえば漫画やアニメで「キングダム」に登場する李斯は
その職務内容まで知っている人が増えているでしょうね。
漫画では韓非子のエピソード辺りでよく登場していた記憶があります。
とはいえ、原典について解説した「著者解題」が
文庫版では書き下ろしで収録されているのが有り難かったです。
全五篇、正直なところ、原典をよく知らない作品も含まれていますが
それでもどの短編も楽しめたのはやっぱり著者の巧みさが要因。
なんとなくのイメージしか持ち合わせていない人物どころか、その身内が主人公であっても、
短いページ数でグッと感情移入の度合いを高められるのは、
さすが万城目学と感じました。

