「ジャクソンひとり」安堂ホセ。
文藝賞受賞作にして、芥川賞候補作。
ページを捲るにつれ、ストーリーは暗く潜り、
スピードを増していく。
かつて村上龍が「限りなく透明に近いブルー」で踏み込んだような、
ギラリと鈍く光る場所に連れて行かれるような感覚。
少し時系列が分かりづらいとは思うけれども、
主人公ジャクソンの得体の知れなさが
妙にリアルで引き込まれました。
作中で描かれる、四人の人物による入れ替わり作戦に、
読み手である自分まで翻弄されるようにして、
辿り着いたラストに感じる虚しさは、
多分、人種や嗜好だけに紐付けされないものでしょう。
もちろんそれらがこの小説の
重要な部分を担っているのは事実ですが。
過激な場面が多いが、細やかな心情描写に依るものか、
不思議と読みやすさがありました。