「ブラザーズ・ブラジャー」佐原ひかり。
タイトルから先入観で、LGBTに関わる内容と
思い込んで読み始めました。
実際にはそうした思い込みをも踏まえた、
許容や寛容、認識や理解の少し奥にある感情に、
柔らかく力強く踏み込むような小説。
許容や理解って言葉を使うこと自体に
疑問が浮かぶような、考えさせられる内容でした。
しかし、論や理屈を並べ立てるような内容ではなく、
しっかりと家族や青春を描いた、明確に面白い小説ですよ。
夏休みの中高生がこういった素晴らしい本を
読んでくれると嬉しいな、とぼんやり思ったり、
自分のような疾うに大人になったとされる人たちにも
手に取ってほしいとも思います。
特に、個人の趣味嗜好に比較的
寛容であると自認しているような人に勧めたいです。
私自身がそういう人間でしたが、果たして自分の「寛容」って、
正しいのか、あるいは正否の捉え方自体は合っているのか、
と物凄く建設的な自省の時間を得られました。