伊藤たかみ「ボギー、愛しているか」「秋田さんの卵」の二編を収録。
この作家は書いているものの面白さに比して、随分と過小評価されていないだろうかと
私は常々思っています。
芥川賞作家に対して過小評価という言葉は的外れなのかもしれないけれども、
受賞して以降も面白い小説を書いているのに、どうも世の中の認知度が低い気がしているんですよね。
些細な会話の場面、ちょっとした仕草の描き方等、質の良い映画みたいに
声や映像が無理なく再生される感覚が気持ち良いです。
表題作も良いのですが「ボギー、愛しているか」は特に好きです。
大仰な展開を用いず、道徳や倫理と適度な距離を置いて、
それでも漠然とした不安や心配みたいなものに静かに光を灯す作品だと思います。
2023年4月現在ですが、Kindle Unlimited会員の方は無料で読めるようです。
気になった方は是非読んでみて欲しいです。
そして出来れば、この作家の他の作品にも手を広げてくれると愛読者として嬉しいです。