当時16歳にして文藝賞優秀作を受賞した新胡桃さんの作品。
描かれる学校生活は、普遍的な要素もありつつ、現代的。鋭敏な視点がリアリティを生んでいます。
肥大して凝り固まった自意識を抱え、その大きさも固さも自覚している故の苦悩は、
思春期らしい瑞々しさに危なっかしい深みも加え、
星の浮かぶ夜闇へと読者を引き込んでいくようです。
多感な十代を扱った作品ね、という安易な先入観で手に取ると、
他者のみならず自己にも向けられる鋭い視線にたじろぎます。
印象的だったのは、登場人物がクラスメイトを心の中で「ガム」と呼んでいる描写。
親近感のふりをした、人を見下す傲慢さが表れたネーミング、見事な一節でした。
いわゆる陽キャのジメジメとした心理、陰キャの妙に爽やかな在り様、
面白キャラが抑え込んでいる本心。
ただ二面性を極端に描くのではなく、そこには自然で当たり前の混濁みたいなものがあります。
類型化されることで苦しんだり、違和感に悩まされる様子が比較的短い小説の中に、
しっかりと書き綴られていました。