NHK文化センター青山教室での講義をもとにした本。
町田康の文学における原点や思考、幼い頃の記憶等を、かなり率直に語った内容でした。
しかし、そこは町田康ですから、語りにも独特のうねりのようなものがあって、
それは文字にしても伝わってきます。
自身の創作や古典翻訳に対する考えを明かしていて、
町田康の文章に惹かれたり、あるいは逆に難渋した経験を持つ人には得心がいく点が多いと思います。
言葉遣いやリズム感に関するルーツも語っているので、町田康ファンのみならず、町田町蔵ファンにも
興味深い内容ですよ(写真の通り、私は町田康ファンですし、INU「メシ喰うな!」も愛聴しています)。
きっと彼がオートマチックに思考停止に陥るような言葉を避けているからこそ、放つ魅力があるのでしょう。
途中なんだかよくわからない話があったりもするのですが、殊更に整えず、上辺の風情は追わない姿勢が、
小説や詩だけでなく講義にも表れているのかもしれません。
そう思い、多少わからないことは打ち遣っておくことにしました。
恐らく講義にて話しているであろうスピード感で頭の中に再生して、
置いていかれる感覚も厭わず読み進めると、
うねりの中から、胸に落ちてきて収まる言葉が幾つもありました。