市川沙央による第128回文學界新人賞受賞作、そして第169回の芥川賞受賞作。
文學界に掲載された時点で、既に注目されていたと記憶しています。
理由は二つ。一つはこの作品が強靭な当事者意識を持っていること、
もう一つはその当事者であるという点を抜きにしても小説として面白いということ。
主人公は筋疾患先天性ミオパチーに苦しむ重度障害者。
親の遺した多大な遺産を持ち、通信制大学で学びながら風俗系コタツ記事のライターもこなし、
グループホームで暮らしています。
この筋疾患先天性ミオパチーは作者ご自身も患っています。
主人公の動きの描写、心情の吐露は明瞭で克明ながら、
その表現にはブラックユーモアのような面白味もあります。
この作品は闘病生活を追うドキュメンタリーではなく、語りが非常に強い武器となる創作なのです。
故に、小説として受賞し、多くの人に読まれる価値があると思います。
ただ、非常に面白い小説なのですが、ラストの約10ページが私にはいまいちなものに感じられました。
この10ページによって、それまでの文章が不明瞭に揺らぎ、意味合いが曖昧になるのです。
掛け値なしに面白い小説だっただけに、その点だけがとても残念に思いました。
とはいえ、それでも名のある賞を受賞し、注目と称賛を浴びるに相応しい小説です。
気にかかっている方、是非読んでみてください。
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