古川日出夫は熱量と試みの作家、と私は感じてきました。
デビュー以来、書き上げる作品の数、その作品ごとの質量や分量が多い傾向はあります。
また、チャレンジングな作品も頻繁に見られ、東日本大震災以降はその頻度も上がったように感じます。
故郷への思いが反映される活動も多くなったように思います。
この本はタイトル通り、宮沢賢治の作品をリミックスして表現しています。
あるいは感覚的にはサンプリングに近いものもありました。
特に分量を割いて取り上げられているのは「グスコーブドリの伝記」。
読み進めると、この作品に古川日出夫が強く関心を持ってしまう感覚が、
自分の中に浸透していくように思うのです。
かなり挑戦的な一冊だとは思うし、決してスラスラ読めるという作風ではありませんが、
新たな視点への気づき、読むという行為の面白さを再認識するような楽しみがありました。
宮沢賢治に親しんできた方に新たな刺激を与えるものだと思います。
気に入らない章もあるかもしれませんが、きっとその時には刺激では揺るがない自分なりの
確固たるものを感じられるでしょう。
それもまた刺激、外部からの刺激に対し、内部で発生する刺激。
私はかなりの古川作品を読んできていて、数冊は買い求めて、大事に書棚に収めています。
装丁がかっこいいものが多く、所有欲をくすぐられる本が目立つのもこの作家の特徴だと
個人的には感じています。
例えば「ベルカ、吠えないのか?」「ハル、ハル、ハル」「LOVE」等々。
今作の表紙もすごく綺麗です。
宮沢賢治のテイストもあり、色合いも美しいんですよね。