• 四十代夫婦が綴る書評と雑記

目黒区美術館の解体計画に関する記事を目にしまして、

足を運ばねばならない気持ちになって行ってきました。

実際に解体されるのかは現時点ではまだ未定でしょうが、個人的には少し思い入れのある場所です。

行ってみるとわかるのですが、目黒駅から目黒川を越えて

区民プールや集合住宅と近接するような立地なんですよね。

生活の場にアートが存在する、なんて簡単に言うと、

役所の前に唐突に現代アートが野晒しになっているような悲しい光景も時々ありますが、

そういうことではなく、此処はすごく真っ当な形で生活の場と芸術の場が接している感じがして、

個人的に好きな景色なんです。

目黒区民でもない私にあれこれと口を出す権利は無いのかもしれませんが、

できれば今の景色が続いて欲しいものです。

そういうわけで行ってきたのは青山悟さんの「刺繍少年 フォーエバー」。

正直なところ、目黒区美術館に行っておきたいという気持ちが先走り、

失礼ながら刺繍という工芸的な面が全面に出た作品展なのかな、なんて先入観でおりました。

しかし、足を踏み入れると、その刺繍という表現手段もテーマや主張と密接に関わっていて、

芸術家の思い、一人の人間としての願いに触れて熱くなるような感動があったのです。

オールドプリントに刺繍を施したものには、表現としての面白さと同時に、そういった表現によるメッセージ性もありました。
こんな風に有名な絵と画家に関する青山さん独自のキャプションがついていて、それらが幾つも並んでいるコーナーも。
このキャプションがとても面白くて、全てじっくり読み込みました!

もちろん刺繍としての細やかさもあります。建物に灯る光、空の美しいグラデーションが見事です。

そして胸を打たれて、自分の認識を省みる契機に成り得るような作品も。

この世界地図、ものすごく感嘆しました。

仕掛けがあるんですが、それは会場で体感するのが、

最もこの作品に相応しい気がするので書かずにおきます。

本当に素晴らしい時間を過ごせました。

目黒区美術館への思い入れもさらに増した、素敵な体験になりました。

目黒近辺に行かれる方、是非行ってみてください。


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