先日、神奈川近代文学館「帰って来た橋本治」展に行ったこともあり、
橋本治の異常なバイタリティに圧倒されました。
その感覚を忘れぬうちに一冊読みたくて手に取ったのが本書。
二人の女が辿る人生を、幼少期から振り返るような構成。
ポイントはこの二人、住む土地や家族という部分ではうっすらと繋がりがあるものの、
全く関わりがない二人であるということ。
しかし読み進めると、二人の歩みや性質に共通項があるような気もしてくるのが面白いです。
彼女たちの母についてもかなり仔細に書かれており、
悪い親ではないのに、少しずつ彼女たちの心に暗い影を落としていく様子には
緩く絞められていくような妙な恐ろしさがありました。
文体は正直なところ、好みではありませんでした。
論理的過ぎるように感じて、心に届くまでに理屈を通さねばならないような感覚に陥り、
興を削がれることが何度かありました。
ただ淡々としながらもダイナミズムがあって、不思議な読後感のある小説には、
文体の好みを乗り越える魅力があります。
膨大な数の著作を遺した作家ですから、また他の作品にも触れてみたいと思います。