古賀及子さんといえば長年、デイリーポータルZで活躍しているイメージが強いですね。
私が熱心にDPZを読んでいたのは数年前までで、
最近のサイト内容はあまり把握できていませんが、古賀さんの記事の記憶は強く残っています。
朗らかで、カラッとした内容が読んでいて楽しく、
全記事には目を通せないような忙しい時期でも、古賀さんの記事は読んでいました。
そういったライターさんは何人かいましたが、その中でも自分の中では古参という印象。
それから私個人の生活リズムの変化、そしてもしかしたらDPZの変遷によって、
読む機会は徐々に減ったのですが、こうしてエッセイの著者として古賀さんのお名前を目にすると、
すごく嬉しかったんですよね。
この本は、私が思っていた古賀さんの文章の魅力も詰まっているし、
家族や友達との少ししんみりとした思い出、子供と暮らす日々での発見、
昔の恋人との時間など、著者を形成してきた記憶が心地よい距離感と温度で綴られています。
あっさりしているが味わい深い、そんなたびたび読み返したくなるエッセイが満載。
記憶の中にあるDPZの古賀さんのイメージからすると意外な部分もあったりするのですが、
それがマイナスな気持ちを起こさせるわけでは無く、奥行きや体積を知る面白さに繋がっていました。
素敵なエッセイにも色々と種類があるのだと思うんです。
驚きを齎してくれたり、心を癒してくれたり、人生を見つめ直す契機になったり。
このエッセイ集の魅力は、心身を解してくれるような心地良さだと思います。
記憶や日々の淡さ、優しさ、愛しさがカラッとした天気みたく、ただ近くに本として存在する。
そういった喜びを感じました。
長い間、自分の中で肩書きを付けている人っていると思うんです。
例えば「イオンモールで土曜日によくすれ違う人」「隣のビルの多分、管理人さん」のように、
役職も優劣も関係なく、ただ自分の生活との距離感だけが関わるような肩書き。
私にとって古賀さんは「よく見ていたサイトのライターの人」だったのですが、
その肩書きが「面白いエッセイを書く人」に上書きされる感覚がありました。
そういう経験ってあまり無かったものですから、何だか妙に新鮮で印象深い読書体験でした。
ちなみに久々にデイリーポータルZを覗いてみたら、やっぱり面白い記事があって、
これを機に、また時々見てみようかなと思っています。