設定やプロットだけでスタンディングオベーションを送りたくなるような
作品というのが、時々ありますよね。
私にとっては、この小説がまさにそれ。
プロセス部から放り出されて人事部に配属された主人公は会社に対する恨みから、
新卒採用の際に社の不利益になりそうな人間を率先して選考に残す。
この復讐の仕方が長期的な遣り口で且つ本人なりの矜持があって面白い。
会社にとっての不利益、そのために採用候補から選別する方法、
この辺りに対する主人公の理屈が強引ながらも筋が通っていて、それなりの論理性があるのです。
社会派小説でもあり仕事小説でもあるのだと思います。
ただ個人的には謎の復讐劇として主人公の言い分を楽しむのが、
最もストレートにこの小説を味わえる気がしました。
なんたって面白い上にページ数が少ないから、強烈なスピード感で読破できるはずです。
ひとしきり楽しんだ後で、社会や会社についてふと考え込んでみるというのがおすすめ。
石田夏穂さんの作品、他にも読んでみようと思います!