直木賞作家・小川哲によるクイズ番組を題材にしたミステリー。
問題が一文字も読み上げられていない中、答えることが可能なのか。
クイズ番組の決勝での魔法ともヤラせとも見えるゼロ文字押し。
敗れた主人公は、ヤラせではない可能性、その行動に至った理由を求め、思考します。
私は子供の頃、「アメリカ横断ウルトラクイズ」を楽しみにしていましたし、
今でも「全国高等学校クイズ選手権」、いわゆる高校生クイズを見たりします。
クイズ自体を知的好奇心で楽しんでいる面もありますし、
クイズで競うという競技的な側面でバラエティ番組として楽しんでいる部分もあります。
熱烈なクイズ番組好きというわけではない、私のようなライトなクイズ好きって多いと思います。
そういうレベルの方々でも、きっとこの本はとてもワクワクしながら読むことが出来るはずです。
読んでいると、合理的な考察とともに、感情面での記述が多いことに気づきます。
この構成がとても重要で、この本が小説として魅力的なものになっている要因だと感じました。
少しずつ推理が積み上がっていく感じはやや焦ったくもあるのですが、
クイズを一問ずつ振り返るからこそ推論がじわじわと浮かび上がって、
答えの輪郭がはっきりとしていく様が楽しいです。
じっくりと感情移入するが故に心が振り回される終盤の展開が活きるのもあります。
取材を通してリアリティを増したであろうクイズというものに対する描写は、
テレビでクイズ番組に親しんできた人にも驚きを与えるのではないでしょうか。
試験ではなく競技であることを強く意識させられます。
あまり多くを語るとこの小説の面白さが削がれてしまいそうなので書けることは限られますが、
一気に読ませる展開と奥行きがある小説でした。