• 四十代夫婦が綴る書評と雑記

書評「だれかのことを強く思ってみたかった」 淡く移ろう景色を取り出す。

【中古】 だれかのことを強く思ってみたかった 集英社文庫/角田光代(著者),佐内正史(著者) 角田光代の言葉と佐内正史の写真で切り取られた東京。 個人的には切り取るというより抜き出す、取り出すといった感じがしました。 そ …

続きを読む


書評「株価暴落」 NISAが普及した今こそ。

株価暴落 (文春文庫) [ 池井戸 潤 ] 店内での爆破テロから株価が暴落していく大手量販店、 その企業に融資している銀行、爆破犯を追う警察。 それぞれの組織内では足並みが揃っておらず、時に揃わないどころか足の引っ張り合 …

続きを読む


書評「not simple」 一冊の漫画、一人の生涯。

not simple【電子書籍】[ オノ・ナツメ ] 優しく穏やかな男が、運にも身内にも恵まれず、辛い一生を送る。 その一生の終盤を見守る男たちの在り様は適温で柔らかでした。 とはいえ、人生が好転するには失われたものは大 …

続きを読む


書評「ブルース」 あの街の潮の香りまで伝わるよう。

ブルース (文春文庫) [ 桜木 紫乃 ] 一人の匂い立つような妖しい魅力を持つ男と、その男に人生を左右するほどの影響を受ける女たち。 釧路を舞台に、表と裏を行き来しながら描かれる欲望は潤うことのない乾きのようなものを感 …

続きを読む


書評「ランチの時間」 ランチタイムの楽しさをしみじみと。

ランチの時間 [ 益田 ミリ ] 人気作家・益田ミリによる、ランチレビュー……というより、ランチタイムレビューって感じです。 時には高級店でゆっくりと、時にはテイクアウトして自宅で、あるいは自ら腕を振るい料理。 なぜテイ …

続きを読む


書評「猫の目 犬の鼻」 猫の妙なリアリティ。

猫の目犬の鼻【電子書籍】[ 丹下健太 ] 三編収録。 一つ目「ぱんぱんぱん」は少し不思議な読後感。 二つ目「猫の目犬の鼻」と三つ目「名の前の時間」はともに猫が大きくフィーチャーされた作品。 表題作は、リアリティのある女子 …

続きを読む


書評「ブルーインク・ストーリー 父・安西水丸のこと」 清々しい寂しさを感じる本。

ブルーインク・ストーリー 父・安西水丸のこと [ 安西 カオリ ] 安西水丸の長女によるエッセイ集。 父の思い出を語る文章は、時にその人柄を感じさせ笑みが漏れつつ、 会えない人を思う寂しさが滲んで、切ない。 しかし、ジメ …

続きを読む


書評「人生を救え」 人生相談パートは面白いのに。

人生を救え! (角川文庫) [ 町田 康 ] 本書前半の、町田康が担当した新聞紙上での人生相談部分は面白いんです。 どの相談にも正面から受けながら、飄々と流すような素振りでと思いきや、 しっかりと結論を言う。 町田康の人 …

続きを読む


書評「最低」 女を描くことで男を描き、男を描くことで女を描く。

最低。 (角川文庫) [ 紗倉 まな ] (この投稿をしている2025年5月現在では)現役AV女優による、すごく真っ当な印象の短編集。 その職業を切り離したとしても一冊の本として素直に楽しめるし、 その職業に就いているか …

続きを読む


書評「成瀬は天下を取りにいく」 読書好きとして嬉しかった大ヒット。

成瀬は天下を取りにいく [ 宮島 未奈 ] 近年珍しいくらいの爆売れ小説ですよね。 収められている短編はどれも読みやすく、面白く、気分が良くなります。 読んでみると「そりゃ売れるわ」とも思うし「これが売れる世の中で良かっ …

続きを読む


書評「手と目と声と」輪郭の見える短編集。

手と目と声と【電子書籍】[ 灰谷 健次郎 ] 灰谷健次郎による柔らかく率直な言葉で綴られる4つの短編は、 体感したもの、心に生じたものを飾り立てることなく示していました。 人の生活に残酷なまでに自然と根づいてしまう差別や …

続きを読む


書評「新しい恋愛」 織り込まれ、練り込まれた感情。

新しい恋愛 [ 高瀬 隼子 ] 芥川賞作家、高瀬隼子によるとてつもなく惹き込まれる一冊。 短編5篇。その中に5種類の感情、5種類の恋愛が描かれているどころか、 もっと多様で多数の気持ちが織り込まれ、練り込まれ、 複雑なも …

続きを読む