• 四十代夫婦が綴る書評と雑記

書評「両手にトカレフ」 子どもが担わされた現実に対し、大人はどう在るべきか……

両手にトカレフ ブレイディみかこさんによる小説。 ドラッグに依存する母と、幼く繊細な弟と共に暮らす14歳のミアが主人公です。 家は貧しく、頼りにはならない母の代わりに、彼女が弟の世話も一手に引き受けている現状。 そんな苦 …

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今日マチ子「わたしの#stayhome日記」2020-2023展 に行ってきました。

町田市民文学館ことばらんどにて、今日マチ子さんの展覧会がやっていると知り、行ってきました。 今日さんといえば代表作である『センネン画報』でその淡く綺麗で かわいらしい絵を知っている方も多いとは思いますが、 コロナ禍から少 …

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書評「星に帰れよ」 他者にも自己にも鋭敏。

星に帰れよ 当時16歳にして文藝賞優秀作を受賞した新胡桃さんの作品。 描かれる学校生活は、普遍的な要素もありつつ、現代的。鋭敏な視点がリアリティを生んでいます。 肥大して凝り固まった自意識を抱え、その大きさも固さも自覚し …

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書評「投げない怪物 佐々木朗希と高校野球の新時代」 チーム編成の歴史と新潮流。

投げない怪物: 佐々木朗希と高校野球の新時代 甲子園と令和の怪物(小学館新書) 加筆と再構成の上で改題されているようですが、私が読んだのは加筆前のもの。 2019年夏の甲子園予選、岩手大会決勝で佐々木朗希投手が登板しなか …

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書評「紅だ!」 主役性までイーブンな探偵バディもの。

紅だ! 直木賞作家である桜庭一樹の書き下ろし作品。 この作者にしては、本作は随分ストレートにエンタテイメント性を重視している印象でした。 元オリンピック・テコンドー代表と、元警察官のバディもの。 この主人公である二人の探 …

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書評「テクノカットにDCブランド」 サブカルの雄が書く迷走の日々。

テクノカットにDCブランド サブカルの雄、みうらじゅんさんが自らの迷走の時代を書いたエッセイ。 雑誌「コンティニュー」に連載されていただけあって、中盤までは若かりし頃を ファミコン等のゲームの思い出と共に振り返っている内 …

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書評「秋田さんの卵」 漠然とした不安に小さな光を灯す

秋田さんの卵 伊藤たかみ「ボギー、愛しているか」「秋田さんの卵」の二編を収録。 この作家は書いているものの面白さに比して、随分と過小評価されていないだろうかと 私は常々思っています。 芥川賞作家に対して過小評価という言葉 …

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書評「死にたい夜にかぎって」 情けなくも逞しい日々の回想。

文庫 死にたい夜にかぎって (扶桑社BOOKS) 日刊SPA!での連載に加筆修正した爪切男のエッセイ。 アスカという女性との6年に渡る多難な同棲生活を中心に、 過去に出会った女性、夢を忘れて忙殺される日々等を書いています …

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八王子へ「アルフォンス・ミュシャ展」に行ってきました。

八王子市夢美術館で開催中の「アルフォンス・ミュシャ展」へ行ってきました。 比較的こじんまりとした美術館ですが、中にはたくさんの展示があり、ボリュームがあります。 名作「ジスモンダ」のポスター等、舞台ポスターもたくさん。 …

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書評「漱石漫談」 漱石のへんてこなところまで楽しむ。

漱石漫談 日本で一番有名と言っても過言ではない作家、夏目漱石の著作を漫談形式で論じる文学評論。 いとうせいこうと奥泉光のコンビが開催している講演「文芸漫談」から漱石作品を扱った回を集めた本です。 私は学生時代、文学部で学 …

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書評「おもろい以外いらんねん」 括られて見えづらくなるものの可視化。

おもろい以外いらんねん 主な登場人物は高校の同級生だった三人。 プロの芸人としてコンビを組む二人と、彼らをテレビや配信越しに見つめる一人。 お笑い芸人を小説の題材として据えるのはとても難しいことではないかと思う。 有名な …

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書評「プチ哲学」 気楽に穏やかな気持ちで新しい考え方に踏み出す。

プチ哲学 (中公文庫) 著者の佐藤雅彦さんは、私のような四十代の人にとっては 「ポリンキー」「バザールでござーる」等を手がけた方と言えばピンとくるかもしれません。 懐かしいですよね、NECのCM! 「だんご三兄弟」のプロ …

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