• 四十代夫婦が綴る書評と雑記

書評「ペーパー・リリイ」 強かで爽やかなロードムービー

ペーパー・リリイ 結婚詐欺師の姪と、その詐欺師に騙された女、二人の旅路。 妙な関係性の二人は、性格もまるで違うし、女子高生と三十代で世代も違います。 この二人、ちょっと誤解を生みそうな言い方になってしまいそうですが、 私 …

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書評「私の文学史 なぜ私はこんな人間になったのか?」 偏屈な在り方を率直に語る。

私の文学史: なぜ俺はこんな人間になったのか? (NHK出版新書 681) NHK文化センター青山教室での講義をもとにした本。 町田康の文学における原点や思考、幼い頃の記憶等を、かなり率直に語った内容でした。 しかし、そ …

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書評「きみに贈る本」 出会い、向き合う書評集。

きみに贈る本 中日新聞・東京新聞での連載を書籍化した書評集。 中村文則・佐川光晴・山崎ナオコーラ・窪美澄・朝井リョウ・円城塔、6人の作家が、 9冊から10冊(うち1冊は自著)紹介しているのですが、 1冊あたり2ページ半ほ …

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書評「完全犯罪の恋」 かつて文学青年だった方におすすめしたい小説。

完全犯罪の恋 ソール・ライターの写真を用いた表紙に惹かれ、手に取りつつも、 何だか田中慎弥らしくないタイトルだな、と思いました。 その印象は、序盤を過ぎた頃、いつの間にか消えていました。 芥川賞作家の著者本人を思わせる四 …

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書評「クララとお日さま」 温かく冷たい、人間と心を書いた小説

クララとお日さま カズオ・イシグロのノーベル文学賞受賞後、第一作。 AFと呼ばれるAI人口知能を有したロボット・クララと、 彼女と共に暮らすことになった少女ジョジーの交流、二人を取り巻く人々との暮らしが描かれています。 …

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書評「畏れ入谷の彼女の柘榴」 現代性と民俗性が見事に溶け合う。

畏れ入谷の彼女の柘榴 私が学生の頃、後輩が舞城王太郎さんのファンでよく薦められました。もう二十年も前のことです。 当時は近代文学のゼミとサークル活動に忙しく、なかなか手に取ることが出来ませんでした。 それから随分と時は経 …

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書評「ラーメンカレー」 独特な味わいの連作短編集。

ラーメンカレー 芥川賞作家 滝口悠生の連作短編集。 ラーメンとカレーというこれ以上ないほどにポピュラーな食べ物がタイトルに並んでいるため、 勝手にほのぼのとしてポップな作品をイメージしていましたが、これがなかなか癖のある …

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書評「両手にトカレフ」 子どもが担わされた現実に対し、大人はどう在るべきか……

両手にトカレフ ブレイディみかこさんによる小説。 ドラッグに依存する母と、幼く繊細な弟と共に暮らす14歳のミアが主人公です。 家は貧しく、頼りにはならない母の代わりに、彼女が弟の世話も一手に引き受けている現状。 そんな苦 …

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書評「星に帰れよ」 他者にも自己にも鋭敏。

星に帰れよ 当時16歳にして文藝賞優秀作を受賞した新胡桃さんの作品。 描かれる学校生活は、普遍的な要素もありつつ、現代的。鋭敏な視点がリアリティを生んでいます。 肥大して凝り固まった自意識を抱え、その大きさも固さも自覚し …

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書評「投げない怪物 佐々木朗希と高校野球の新時代」 チーム編成の歴史と新潮流。

投げない怪物: 佐々木朗希と高校野球の新時代 甲子園と令和の怪物(小学館新書) 加筆と再構成の上で改題されているようですが、私が読んだのは加筆前のもの。 2019年夏の甲子園予選、岩手大会決勝で佐々木朗希投手が登板しなか …

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書評「紅だ!」 主役性までイーブンな探偵バディもの。

紅だ! 直木賞作家である桜庭一樹の書き下ろし作品。 この作者にしては、本作は随分ストレートにエンタテイメント性を重視している印象でした。 元オリンピック・テコンドー代表と、元警察官のバディもの。 この主人公である二人の探 …

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書評「テクノカットにDCブランド」 サブカルの雄が書く迷走の日々。

テクノカットにDCブランド サブカルの雄、みうらじゅんさんが自らの迷走の時代を書いたエッセイ。 雑誌「コンティニュー」に連載されていただけあって、中盤までは若かりし頃を ファミコン等のゲームの思い出と共に振り返っている内 …

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