• 四十代夫婦が綴る書評と雑記

書評「グスコーブドリの太陽系 宮沢賢治リサイタル&リミックス」 挑戦と刺激の一冊。

グスコーブドリの太陽系 :宮沢賢治リサイタル&リミックス 古川日出夫は熱量と試みの作家、と私は感じてきました。 デビュー以来、書き上げる作品の数、その作品ごとの質量や分量が多い傾向はあります。 また、チャレンジングな作品 …

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書評「ふわふわ」 自然な違和感、柔らかな読後感。

ふわふわ (講談社の創作絵本) 村上春樹と安西水丸の名コンビによる絵本、元々は1998年に刊行されていたものを新版にて再刊行。 この二人はもちろんコンビとしてファンの間では有名ですが、 村上春樹と猫、も頭に浮かびやすい組 …

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書評「『メランコリア』とその他の詩」 言葉の楽しさに触れる

「メランコリア」とその他の詩 池澤夏樹による二部構成の詩集。 第一部にあたるのが「メランコリア」。 1998年にイラストレーター阿部真理子との共著で出版した同名作品の詩部分のみを再掲した形。 去った女を追う男の道程を詩に …

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書評「不連続殺人事件」 無頼派文豪による名作推理小説。

不連続殺人事件 (角川文庫) 文豪・坂口安吾による推理小説。 不勉強なことに、安吾が書いたからには推理というよりは 文章そのものを楽しむ作品なのだろうなと思い込んでおりました。 これが読み進めてみるとビックリ! もちろん …

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書評「金本・阪神 猛虎復活の処方箋」 勝つための理論、強さの秘訣。

金本・阪神 猛虎復活の処方箋 (宝島社新書) 2023年から阪神タイガースの監督に岡田彰布さん就任。 今年は本当に阪神、強いですよね! これを書いている現在でマジック5。 2005年以来のリーグ優勝は秒読み段階です。 さ …

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書評「赤い砂を蹴る」 喪失を抱えたブラジルへの旅路。

赤い砂を蹴る 劇作家・石原燃の小説デビュー作。 母を亡くした主人公は、母の友人と共にブラジルへと旅に出る。 その友人自身もまた、夫を亡くしたばかり。 喪失と、喪われた人の想いに向き合う旅路。 淡々と書かれているような場面 …

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書評「中野正彦の昭和九十二年」 主人公 ノットイコール 作者。

発売予定直前に版元から各書店に回収通知が出され、多くの人の手には渡らなかった小説。 当然、作者の意に沿わない顛末ではありましたが、回収し切れなかった本もありました。 樋口毅宏の著作を何冊も読んだ者として強い興味を持ってい …

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書評「少女を埋める」 小説を評する際の誠実さについて省みる。

少女を埋める (文春e-book) 桜庭一樹の自伝的小説集。 三篇収められており、表題作「少女を埋める」があって、 その作品を巡る騒動の顛末と日々の心情を描いたような「キメラ」と「夏の終わり」が続くような構成。 「少女を …

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書評「自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体」 地道な取材が明らかにする自衛隊の”陰”

自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 (講談社現代新書) ドラマ「VIVANT」盛り上がってますね! この記事を書いている現在、第四話まで放送されていますが、めちゃくちゃ面白い。 そのスリリングな展開の中、気になる …

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書評「ハンチバック」 ドキュメンタリーではなく小説としての強靭さ。

ハンチバック (文春e-book) 市川沙央による第128回文學界新人賞受賞作、そして第169回の芥川賞受賞作。 文學界に掲載された時点で、既に注目されていたと記憶しています。 理由は二つ。一つはこの作品が強靭な当事者意 …

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書評「クジラアタマの王様」 コロナ禍を予見した、試みの小説。

クジラアタマの王様(新潮文庫) 随分コロナ禍を直接的にモチーフに使うんだなぁと読み進めて、 ふと奥付を見ると、2019年7月5日が初版。 コロナで世界が騒然とし始めるよりずっと先にこの小説を書いていたのかと思うと、 感服 …

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書評「デッドライン」 哲学を動力に。

デッドライン(新潮文庫) 先日発表された第169回芥川龍之介賞でも「エレクトリック」で候補となった千葉雅也の初小説。 芥川賞候補には三度なっていますが、この「デッドライン」も候補作品でした。 作品と作者は分けて考えられる …

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