• 四十代夫婦が綴る書評と雑記

書評「ジュージュー」 閉塞感の先にある清々しさ。

ジュージュー (文春文庫) [ よしもと ばなな ] 緩やかながら力強い再起や再生を描いた作品だと感じました。 大きく損なわれているように見えなくても、とっくに立ち直っているように見えても、 決定的に弱っているということ …

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書評「娘が母を殺すには?」 苦しくなる題材、広い間口。

娘が母を殺すには? [ 三宅香帆 ] ちょっと慄くようなタイトルではあります。 ただ、読み進めれば、早々にフロイトが言う「父殺し」のような意味での 母娘の関係についての本だとわかります。 この本では、そういった父と息子で …

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書評「そういうゲーム」 軽やかに穏やかに。

そういうゲーム [ ヨシタケシンスケ ] ヨシタケシンスケさんによる、人生について穏やかに見つめ直すことができる絵本。 人生の諸々を、あるいは人生自体をゲームに例えるって聞くと、 なんだか諦めや冷たさのようなものを連想し …

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書評「君のクイズ」 0文字回答を追う中で浮かび上がる心理。

君のクイズ [ 小川哲 ] 直木賞作家・小川哲によるクイズ番組を題材にしたミステリー。 問題が一文字も読み上げられていない中、答えることが可能なのか。 クイズ番組の決勝での魔法ともヤラせとも見えるゼロ文字押し。 敗れた主 …

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書評「はじめて学ぶみんなの政治」 絵本コーナー付近にある大人向けの一冊。

図解 はじめて学ぶ みんなの政治 [ 浜崎絵梨 ] ここ数ヶ月、国内外での選挙関連のニュースに触れる度、 自分の政治に関する知識がいかに足りないかを思い知りました。 衆議院議員選挙と首相指名、アメリカ合衆国大統領選挙、兵 …

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書評「カーテンコール」 バイタリティに尊敬を。

カーテンコール [ 筒井 康隆 ] 筒井康隆の最後の作品集になるとされている一冊。 作品に世相や老いに対する心情が滲んでいるように感じます。 元々、モチーフに社会批判を盛り込むことは多い作家だと思いますが、 掌編小説集と …

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書評「バンド論」 フロントマンの言葉に宿る魅力。

バンド論 [ 山口 一郎 ] それぞれ魅力あるバンドのボーカリストである5名がバンドや活動の動機等について語る内容。 バンド論とは銘打たれているが、そこだけに留まらず、音楽に対する思い、 バンドメンバーとの関係性、自身が …

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書評「東京」 スタイリッシュな線で描かれる東京の空気。

東京 (その他) [ 上條 淳士 ] スタイリッシュで美しいイラストはもちろん魅力的。 漫画は原稿に近いようなベタの濃淡まで伝わる形で収められており、 じっとその技術とセンスに見入ってしまいます。 タイトル通り、この本で …

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書評「その世とこの世」 二人の在り方を感じる一冊。

その世とこの世 [ 谷川 俊太郎 ] 往復書簡ではあるものの、二人の手紙はあまりトピックを強くは共有しない。 ブレイディみかこからのトピックに対し、谷川俊太郎が乗っからない感覚があります。 すれ違っていたり、ずれているの …

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書評「盗作」 心に馴染むミステリアスな作品。

【中古】 盗作/伊藤たかみ(著者) 伊藤たかみの2003年出版の作品。今はちょっと手に入りづらいかもしれません。 ミリテリアスな小説だが、ミステリー小説ではないです。 主人公であるスランプ中の作家は、死んでしまった友人の …

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書評「黄金比の縁」 社会派お仕事復讐劇。

黄金比の縁 [ 石田 夏穂 ] 設定やプロットだけでスタンディングオベーションを送りたくなるような 作品というのが、時々ありますよね。 私にとっては、この小説がまさにそれ。 プロセス部から放り出されて人事部に配属された主 …

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書評「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」 タイトルから受ける印象とは異なる読み心地。

なぜ働いていると本が読めなくなるのか【電子書籍】[ 三宅香帆 ] このタイトルから想像していた内容とは違う雰囲気に「おや?」と思うものの、 これがかなり面白かったです。 日本人の読書習慣と労働意識や労働時間を軸に、年代を …

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