久々に再読した「海峡の光」が面白かったので、辻仁成のデビュー作を読んでみました。
見るべきものから目を逸らし、見えないものを見出す。
そんな主人公の在り様が、教訓めいたものとは距離を置いて書かれています。
他者からの視線が意識的に書かれ、それは同時に主人公の視線を書くことも示しているようです。
青春時代の閉塞や苛立ち自体を描写し、
その理解や克服という対象としては捉えていないように思います。
ただ、ここが肝要なのですが、捉えることが出来ていないのではなく、
そういった選択をしないことで小説の純度が高められているように感じました。

伝統的とも言えるモチーフを、著者ならではの扱い方で書いてみせたという意義を感じる一冊。
教訓や感涙とは隔たった場所で成立している小説です。
それが作品として成立し得るのだというのが文学なのだとしっかり思えました。
素直に読んで良かったですね。
もっと若いうちに読めていたら、また異なる面白さも感じたんでしょうけれども、
それでも中年になった今だからこそ感じ取れるもの、受容できるものもあるように思います。
ちなみに、島田雅彦氏の解説は、
何だか作品や作家について記すより、自らの主張を綴ることを優先したもののようで、
読後の余韻を随分損なわれた気がします。
あまり解説に強く反発することって無いんですが、
どうにもモヤモヤする数ページでした……。

