芥川賞作家である津村記久子に対し、
夏葉社の島田潤一郎がインタビュアーの役割ということになっていますが、
ところどころ対談のように二人の発話量が近づく箇所も見られて、
その辺りに本書の魅力を感じます。
二人の間に、例えば海外のサッカー選手やある時期のロック等、
共通のトピックがあることで一方的な質問と回答ではなく、往復と展開が生じているのです。

ふつう、という曖昧な基準にうまく飲み込めない部分はありますが、
着実であったり習慣であったり反復であったり、
そうした地味な響きを持つ営みが人の胸を打つ作品を成立させる様子は、
小説家以外の市井の人々にも気づきや再認識をくれると感じました。
なんの引っかかりも無く進んでいくインタビューではありません。
時々、リズムが崩れるような部分もあります。
だからこそ、言葉に質感や誠実さが宿るのだと思います。
気分良く促すだけの相槌や言葉を紡がせるだけの敢えての反論ではありません。
意味のある組み合わせだからこそ、魅力のある遣り取りが記されていました。
「水車小屋のネネ」で注目を集める津村記久子に興味を持って手に取る人が多いと思いますが、
個人的にこの本は島田潤一郎がインタビュアーを務め、夏葉社から出版されたということに
大きな意味があるように思います。
労働や生活といったものが小説家と編集者から語られるということに、
労働で生活を削られている読者たちにとっての重要な意義があると受け取りました。

