文庫裏表紙のあらすじと序盤の雰囲気から、
勝手にハードボイルドな冒険譚を想像していたため、
読み進めると、中盤からとても戸惑いました。
冒険と思想と宗教と戦争と歴史、多くの要素が盛り込まれています。
そして、幾つかのストーリーが内包されていて、それらは運命めいた繋がりを持っています。
運命というと少しロマンチックに響く気もするので、
個人的には言い換えれば宿命のイメージに近いですかね。

そうしたストーリーの重層性と相関性、構築要素の配合がこの小説の肝だと感じましたが、
私にはあまり合わなかったです。
強く思想が打ち出されていますが、
そこへの同意不同意が決定的に本書を遠ざけることはない気がします。
小説として書かれていて、尚且つ明確に文章が巧みだからでしょう。
さすがは中村文則。
ただ、挿し込まれるストーリーの分量と、
要素の配合バランスがどうにも好みではありませんでした。
一番メインとなっているであろうストーリーを楽しみにしていましたし、
実際に楽しんでいましたが、他のストーリー部分が長過ぎます。
そして、思想や戦争、歴史の要素がこの小説にとって非常に重要なのは間違いないのですが、
それにしても序盤を引っ張った冒険の要素が後半では随分と薄まるのです。
思っていたのとまるで違う小説が大ボリュームで展開されていく。
公正世界仮説に疑義を投げかけるようなプロット、
随所に見られる高い水準にある筆致、
惹きつけられるものは多いのですが、
引き込まれる頃合いでストーリーは切り替わってしまう印象でした。
漫画でもメインストーリーからサブキャラクターのストーリーや登場人物の過去編に
展開が移ることがありますよね。
その掘り下げがめちゃくちゃに面白い作品もありますが、
その移遷によって興が削がれた、気分が冷めちゃうことってあると思うんです。
そんな感覚に近いものが、この小説にもありました。
楽しんでいるからこそ、残念なんですよね……。
うーん、ここ最近、分量の多い小説に自分の感覚がうまくフィットしなくなってきました。

