「八月の路上に捨てる」で芥川賞を受賞するより前の作品。
私は伊藤たかみさんの愛読者で、大好きな作品が幾つもあります。
その作品のジャンルはかなり幅広く、純文学の作家とは認識していますが、
比較的若い世代向けのものも得意としている印象。
青春小説と呼ばれる傾向のものも作品群には多いんです。
例えば図書館に行くと、もちろん小説コーナーに著作が並んでいますが、
数冊はティーン向け、中高生向け、という棚に並んでいることも多いんです。
さて、この「雪の華」は青春小説でもあり、サスペンスの要素もあります。
ただ謎解きを楽しむというよりは、
明らかになっていく出来事や感情、
それらが隠されていた理由を興味深く読んでいくといったものではないか、と感じます。

前述した通り、幅広い分野の小説を書く作家である以上、
愛読者でも作品により好みの度合いはバラつくとは思います。
ただ愛読者の一人としては、そんな多様な作品のどれもが読みやすい文章だというのは、この作家の優れた点。
正直に言えば、伊藤たかみ作品の中では、この小説は私の好みから少し外れます。
でも、伊藤たかみが書くことによって、十分に小説としての魅力が担保され、
言葉を胸に収めていく楽しさがあります。

