• 四十代夫婦が綴る書評と雑記
東京の子 (角川文庫) [ 藤井 太洋 ]

新設された大学、

革新的な奨学金の労働に関する制度。

何やら昨今の世の中を思い浮かべてしまう、藤井大洋による小説。

パラレルな東京で繰り広げられる事態は、

政治的にも経済的にも時流的にもリアリティがあります。

しかし、頭でっかちなストーリーになることなく、

アクション映画のような躍動感も、

近未来SF映画のような景色の構成もあって、

娯楽性も担保されています。

登場人物たちの一部も感じているように、

この小説で問題とされている事柄は、

なかなか悪とも断じ切れず、

とはいえ善とも言い難そう。

その点にこそ思惑や信念の交錯があって、

奥行きが生まれていました。

やや多めのボリュームは、冗長や間延びではなく、

明確に満足感に繋がっています。


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