青春小説といえば、爽やかな中にもじゅくじゅくと湿り気のある懊悩がある、そんなイメージがあります。
この短編集は、河出文庫の爽やかな表紙とは真逆の、じゅくじゅくの懊悩が中心。
目を見張るような見事な一文が、幾つもある辺り、さすがは直木賞作家とは思いますが、
各短編の主人公たちにはあまり好感も共感も抱けず、それどころか嫌悪感すら持ってしまう人物もいました。

中年にもなると、中学高校あたりの記憶が薄れていく部分はあるのですが、
それでも未だに思い出しては、心が翳ることはあります。
普段であれば、忘れてしまったことにしておきたいけど、
忘れてしまうわけにはいかない気がしていることがあります。
この本を読んでいると、そうした記憶が引っ張り出されて
暗い気持ちになりました。
青春のジメジメとした気持ちの悪いものを突き付けられるようです。
確実にダメージを与えてくる短編集、角田光代の恐さも凄みも感じる一冊でした。

