古川日出男の賞編集。
ここ数年の著者には大長編と感じる分厚い小説が目立ちますよね。
物理的に大きな背表紙が書店で目につくから、尚更にそう感じるのかもしれませんが。
しかし、傾向として近作でも「曼陀羅華X」「夏迷宮」等、
ここまでボリュームのある作品をハイペースに発表する作家はやっぱり珍しいと思います。
正直なところ、今の私にはそのボリュームを読み終える体力も精神力も無いので、
この随分前に書かれた賞編集の方が手に取りやすい。

古川日出男という作家はリアリティーのある舞台設定に、
違和感を覚える事物や事象を織り込むことで小説に独自の世界観を作り上げる印象があります。
この独自性は語りにも感じられ、読み込むにはかなり集中力を要します。
その稀有な読書体験を味わいたくなっても、
なかなか分厚さに立ち向かう自信が湧かないならば、
この本で傾向や風味に触れるのが良いのではないでしょうか。
リアリティーと違和感が混ざり合う様は、数ページの掌編でも体験できるはず。
老いた今の私の感性では十全に享受し切れない魅力が、
好奇心あふれる若者になら注ぎ込まれていくかもしれません。

