• 四十代夫婦が綴る書評と雑記

書評「自動起床装置」 小さな舞台ゆえに改めて感じる文学の凄みと深み。

自動起床装置【電子書籍】[ 辺見庸 ] 1991年の芥川賞受賞作。 辺見庸の名前は知っていましたが、著作は恥ずかしながら読んでいませんでした。 ジャーナリストのイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。 この表題 …

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書評「フルタイムライフ」程良い距離感で読む新社会人生活。

フルタイムライフ (河出文庫) [ 柴崎 友香 ] 柴崎友香さんの作品はけっこう読んでいるのですが、 これも面白いんですよね。 文庫版の表紙もかわいくて良いんですが、 この古本屋でもあまり見かけない単行本のデザインも素敵 …

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書評「シャーロック・ホームズの凱旋」 ポップネスを勝ち得るメタフィクション。

シャーロック・ホームズの凱旋 (単行本) [ 森見登美彦 ] ホームズがモリアーティ教授と友人同士で、 アイリーン・アドラーがライバル探偵で、住まいは寺町通221B? こんな風にその関係性と舞台の違和感を存分に楽しむには …

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書評「虹ヶ原ホログラフ」 魔術的に惹き込まれる醜さと才能。

虹ヶ原ホログラフ [ 浅野いにお(1980-) ] 浅野いにお初の長編連載作品。掲載誌はクイックジャパン。 この本を買ったのはもう19年も前。 その頃にはこの作者の作品にすごくハマっていて、ほとんどの単行本を発売してすぐ …

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[書評]「ニセコ化するニッポン」 ヴィレヴァンを愛していた頃を思い出す。

ニセコ化するニッポン [ 谷頭 和希 ] 北海道出身としては、ニセコにおける外国化、富裕な外国人しか遊びようのない物価の高騰 というのはとても気がかりでした。 ニセコやその近郊に住む人々はもちろんのこと、 道民にとっても …

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書評「求愛瞳孔反射」

求愛瞳孔反射 (河出文庫) [ 穂村 弘 ] 穂村弘の短歌やエッセイは面白く読んでいるですが、 この詩集はあまり好きではありませんでした。 なんだか露悪的な印象。 それが強がりや気概に見えれば可愛げに繋がるのでしょうが、 …

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書評「ロイヤルホストで夜まで語りたい」 ファミレスに向けられる多様な愛。

ロイヤルホストで夜まで語りたい [ 朝井リョウほか ] 北海道の田舎で育った私には、ロイヤルホストは縁遠いもので、 初めて強烈にその名を意識したのはスピッツの名曲「ナナへの気持ち」でした。 行ったことすらないファミレスに …

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書評「火口のふたり」 肉欲の乾湿。

火口のふたり (河出文庫) [ 白石 一文 ] 好きな作家の一人、白石一文の小説。 柄本佑が主演で映画化もされました。 肉欲に溺れる二人の姿は、根本的な生への希求のようにも見えつつ、 何かから目を逸らすように古い思い出も …

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書評「だれかのことを強く思ってみたかった」 淡く移ろう景色を取り出す。

【中古】 だれかのことを強く思ってみたかった 集英社文庫/角田光代(著者),佐内正史(著者) 角田光代の言葉と佐内正史の写真で切り取られた東京。 個人的には切り取るというより抜き出す、取り出すといった感じがしました。 そ …

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書評「株価暴落」 NISAが普及した今こそ。

株価暴落 (文春文庫) [ 池井戸 潤 ] 店内での爆破テロから株価が暴落していく大手量販店、 その企業に融資している銀行、爆破犯を追う警察。 それぞれの組織内では足並みが揃っておらず、時に揃わないどころか足の引っ張り合 …

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書評「not simple」 一冊の漫画、一人の生涯。

not simple【電子書籍】[ オノ・ナツメ ] 優しく穏やかな男が、運にも身内にも恵まれず、辛い一生を送る。 その一生の終盤を見守る男たちの在り様は適温で柔らかでした。 とはいえ、人生が好転するには失われたものは大 …

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書評「ブルース」 あの街の潮の香りまで伝わるよう。

ブルース (文春文庫) [ 桜木 紫乃 ] 一人の匂い立つような妖しい魅力を持つ男と、その男に人生を左右するほどの影響を受ける女たち。 釧路を舞台に、表と裏を行き来しながら描かれる欲望は潤うことのない乾きのようなものを感 …

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